万葉の故地を写真で巡る 万葉の風景


07-1194 紀の国の 雑賀の浦に 出で見れば 海人の燈火 波の間ゆ見ゆ 藤原房前 雑賀崎




写真: 雑賀崎から夕陽を望む
Jul. 17, 2010
Manual_Focus Lens75mm, Format67
RVP100F

藤原卿作七首のうちの一首。藤原卿は、藤原四卿のひとり藤原房前(ふじわらふささき)と考えられる。いまだ年月などの詳細は不明と題詞にいう。
"紀伊国(和歌山県)の雑賀浦に出てみると、漁をしている海人の漁火が浪の間から見える。"

既に30年ほど前 大学生の頃に、万葉学者で有名であった犬養孝先生の万葉旅行会に参加したことがありました。当時、先生は武庫川女子大の名誉教授であられたので、旅行会には女大生がたくさん来るというので、合コンのつもりで一緒に行こうと友人にそそのかされて参加しただけのことで、まったく動機が不純。万葉集の何たるかは全くわからない我々は、先生方の講義に静かに耳を傾けるまじめな女学生達の雰囲気になじめず、後ろをうろうろするばかり。結局まともに先生が何を講義されたかも覚えていない始末。考えてみると先生にお目にかかったのはそれ1回だけ(1998年に亡くなられた)で、近年旅行の際には必ず犬養先生の「万葉の旅(上)(中)(下)」を鞄にしのばせて座右にしていることを思うと、なんと勿体無いことを! 人生は恥のかき捨てとはいうものの、出会いがあったのに係らず感じることの出来なかった自らの不学を恥じるのみ。
告白するならば、今回この場に来て、30年前のそのことを思い出した次第。正確に言うと、30年前に旅行会で訪れたのは、写真の場所(雑賀崎燈台)からやや下ったところにある番所庭園(ばんどこていえん)であったはず。この景色を見た瞬間、何か変な感覚(デジャブ? 夢を思い出そうとして苦しむような感じ)にとらわれて、小一時間ほどこの場で立ち尽くしていましたが、ハタと気がついたのは30年前のそのこと。地図を頼りに番所庭園のほうにも行ってみましたが、果たしてかすかな私の記憶とその場所の景色がピッタリ符合しました。ただし、先生の講義の内容や細かいことは思い出せないまま。万葉集に雑賀崎に関連する歌はこの歌だけなので、30年前の旅行会で犬養先生が講義されたのは、この歌のはず。30年という時間はあまりに長いということに改めて思い至るのでありました。


なお、この日は夏にも係らず空気が澄んで、海(紀伊水道)の向こう 雲が湧いている辺りに、淡路島(20キロくらいの距離)を望むことが出来ました。
(記: 2010年8月25日)

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万葉集の風景 "View of Manyou" HP開設: 2008/5/1 頁アップ: 2010/8/25 Copyright(C) 2008 Kosharaku All Rights Reserved

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