万葉の故地を写真で巡る 万葉の風景


05-0818 春されば まづ咲くやどの 梅の花 独り見つつや 春日暮らさむ 山上憶良




写真: 菅原神社の盆梅
Mar. 1 2009
Manual_Focus Lens75mm, Format67
RVP100

天平2年(730年)の正月13日に、大宰府帥であった大伴旅人の邸宅で行われた宴会の席で、庭に咲く梅の花を題に詠まれた32首のうちの一首。当時憶良は筑前守だったので、大伴旅人は上司の立場にあった。意味は「春になると最初に咲くこの家の梅の花を、私一人で見ながら春の一日を暮らすことになるのであろうか。」

大伴旅人と山上憶良の筑紫における邂逅は、万葉集に一群の豊かな歌作を残しました。この天平2年の「梅歌宴」では、庭に咲く梅を題に32首の歌が詠まれました。ただし憶良の歌はこの一首だけ。旅人も、32首のうちには"主人"として1首を詠むのみで、それら一群の歌の後に「梅の歌に和ふる」と題して、旅人はまとめて四首を詠っています。32首の歌の作者名には、大宰府の行政官あるいは九州の各地方行政区の長官と思われる名前がずらり並んでいて、それぞれ一首ずつという制約があったのかもしれません。正月13日に宴会が催されており、正月開けに九州全域から主だった行政官達が大宰府参賀を行う習慣があって、それを慰労するためにこの宴席が設けられたと思われます。
32首を通詠して、どの歌も形式的な感じがするのは、中国趣味の梅の花を詠うというテーマ故と思われますが、この憶良の歌については大変秀逸に出来ていると思います。直接的には、筑前の国府から単身出張で大宰府に来ている憶良の現在の心境を詠っていると解釈できますが、むしろ大宰府赴任後最愛の妻を亡くして独居している旅人の気持ちを代詠しているとみるべきでしょう。
(記: 2009年3月14日)

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万葉集の風景 "View of Manyou" HP開設: 2008/5/1 頁アップ: 2009/3/14 Copyright(C) 2008 Kosharaku All Rights Reserved

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