万葉の故地を写真で巡る 万葉の風景


04-0608 相思はぬ 人を思ふは 大寺の餓鬼の 後方に 額つくごとし 笠女郎 餓鬼像




写真: 東大寺中門、兜跋毘沙門天像足下の餓鬼像
Feb. 15 2009
Manual_Focus Lens28-70mm, Format35mm
RVP100

「笠女郎、大伴宿禰家持に贈る歌24首」と題詞がある歌群の22首目にあたる。「私を恋してくださらない貴方を想うのは、大寺の餓鬼像を後ろから拝むようなもので、何の効用も無い」という意味。この歌の後、笠女郎は恋を諦めて、故郷に帰ってしまう。

もし男性が、その理由はともかく、女性からのこのような歌を贈られたら、へこむでしょうね。貴方は、大寺にある益体も無い餓鬼像のようなものだと罵声を浴びせかけられているのですからね。
若くして中央政権の有力貴族の頭領の地位にあった大伴家持と、地方豪族の娘に過ぎなかったと考えられる笠女郎とでは、その立場に天と地ほどの差がありました。笠女郎の歌に次のような歌があります。

04-0600 伊勢の海の 礒もとどろに 寄する波 畏き人に 恋ひわたるかも

つまらない歌ですが、このときには恋人を"恐れ多い人"と言っているわけで、通常の恋愛と比べて彼我の関係が相当歪んでいたような印象を受けます。家持は万葉集の編者であったので、万葉集にこれら一群の歌を滑り込ませたのは紛れも無く家持自身であることは間違いなく、それでは家持が歌ったはずの反歌が何故万葉集に載っていないのか大変不思議です。結局笠女郎は、この歌を最後に家持への想いを諦めて故郷に帰ってしまいます。一説には、備前(岡山県)であったとも、近江(滋賀県)であったとも言います。
(記: 2009年3月1日)

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万葉集の風景 "View of Manyou" HP開設: 2008/5/1 頁アップ: 2008/7/1 Copyright(C) 2008 Kosharaku All Rights Reserved

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