万葉の故地を写真で巡る 万葉の風景


18-4074 桜花 今ぞ盛りと 人は言へど 我れは寂しも 君としあらねば 大伴池主




写真: 佐保川の桜
Apr. 4 2009
Manual_Focus Lens150mm, Format67
RVP100

大伴池主が大伴家持に贈った歌。"桜の花は今が盛りと人はいうけれども、あなたと一緒にいないので、私は寂しい"という意味。

越前国の掾の任にあった大伴池主は、天平18年(746年)に隣国の越中国国守として赴任してきた大伴家持と親交を結びました。この歌は、池主から家持に贈られた歌三首のうちの一首であり、次のような池主の言葉が添えられています。
3月14日に深見村に参りましたときに、その北方の越中国を望みました。あなた様の芳徳を思わない日はございません。お近くに参って、忽ちお慕いする気持ちが増してきました。かつて頂戴いたしました手紙に「晩春は惜しい、何時あなたと膝を交えることが出来るかわからない」とありました。生きて別れる悲しみは、どう申し上げたらよいのでしょうか。手紙を書こうとしても、その思いが極まります。お手紙を差し上げることも不憫です。

これに対して、大伴家持は四首の歌を返しています。その中から代表的な一首をあげておきましょう。

18-4077 我が背子が 古き垣内の 桜花 いまだ含めり 一目見に来ね

家持は、"あなたの旧宅の垣根の内にある桜はまだ蕾です。一目見にいらっしゃってください"と情愛深く詠っています。古今や新古今では絶対ありえない、万葉人の大らかな表現です。
(記: 2009年5月3日)

トップ頁 プロフィール 万葉の風景 万葉の花 作家の顔 雑歌 相聞歌 挽歌 雑記帳 リンク

万葉集の風景 "View of Manyou" HP開設: 2008/5/1 頁アップ: 2009/5/3 Copyright(C) 2008 Kosharaku All Rights Reserved

inserted by FC2 system