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かきつばた 衣(きぬ)に摺り付け 大夫(ますらお)の 着襲(きそ)ひ猟(かり)する 月は来にけり |
大伴家持 |
杜若 |
写真: 原種の杜若、 春日大社万葉植物園にて
Jun. 15 2008
Manual_Focus, Micro Lens100mm
RVP100 |
「かきつばたを摺り付けて色を染めた衣を着て太夫達が薬狩りするその月がやってきた」という意味。古代には、摺り付け染めという染色技法があった。なお、この歌は、大伴家持が奈良の自宅にあって、天平16年(744年)4月5日に作歌されたことがわかっている。
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この歌は、民俗学的にみて面白い歌です。まず、かきつばたの摺り付け染めという染色技法が古代にあったこと、それから4月に貴族が打ち揃って薬狩りをする習慣があったことです。薬狩りの行事は、庶民における田植え前の春山入りの習慣が貴族にも引き継がれたものだと思われ、万葉集に数多く詠まれている植物の多くは、実は薬草の名前でもあります。なお、奈良地方には今でも3月末頃に"レンゾ"と呼んで、田植え前に一斉に休んで山に登ったり、お寺に参ったりする習慣があり、春山入りの習慣の名残ではないかと思われます。 |
(記: 2008年6月21日) |
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