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紫草は 根をかも終ふる 人の子の うら愛しけを 寝を終へなくに |
東歌 |
紫草 |
写真: 紫草、春日大社万葉植物園にて
Jun. 15 2008
Manual_Focus, Micro Lens100mm, Format645
RVP100 |
「紫草(むらさき)の根はすっかり採り尽くされてしまった。我がものになっていない、いとおしく想われるあの娘と、まだ契っていないというのに」という意味。紫草の根は、最上級の貴族の衣服(紫衣)を染める染料に使われ、"紫草の根"の"根"は、"寝"にかかっている。東国における伝承歌と思われる。
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東歌は、必ずしも東国で詠われたわけではありません。関東で召集された防人が、九州の前線に送られる途中、難波津(大阪市)で詠まれたとされています。万葉集の選者である大伴家持が若い頃、兵部省の高官であったときに難波津で検閲を行って防人達から直接採録したようです。
ところで、紫草の歌は万葉集に17首あるそうですが、そのほとんとが恋の歌(相聞歌)です。古代には紫草は染料用の植物だったので、紫草というと根が必ず一対で連想されて、それがいとおしい女性との"寝"と繋がっているとこの歌から読み解いたのですが、解説書でそのように説明しているものがありません。サテ? とすると、有名な額田王と大海人皇子の相聞歌"むらさきの にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに われ恋ひめやも"は、もっと意味深長ということになりますね?
古代人にとっても、紫色の服というのは、ちょっとセクシーだったんではないでしょうか。
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(記: 2008年6月21日) |
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