万葉の故地を写真で巡る 万葉の風景


13-3238 逢坂を うちいでて見れば 近江の海 白木綿花(しらゆふばな)に 波立ちわたる 作者不詳 逢坂




写真: 逢坂の国道1号線、姫シャガの花
May 1 2009
Manual_Focus, Micro Lens50mm, Format67
RVP100

意味は、"逢坂の関を越えて逢坂を出てみると、そこには琵琶湖が広がっている。楮で作った白木綿花(しらゆうばな)のように、湖に白い波まで立っている。"というもの。作者不詳。

国道1号線を京都側から東進してみると、逢坂の関跡までは狭隘な谷中の上り道が続きますが、逢坂の関を抜けるとやや下ってすぐにこのような平坦な平野部が現れます。地図で確かめたところでは、逢坂という地名は、逢坂の関から東方のこの平野への開口部をいいます。道の果てに見えるビルが琵琶湖の辺なので、かつてはこの辺り(逢坂一丁目)から直接湖が望めたはずです。
峠道を随分上ってきたはずなのに、峠の頂を少し越えただけで大きな湖が現れるので、すこし不思議な感じに襲われます。この歌は、その異次元感覚を直裁に詠ったものと思われ、この感覚は、実際にその場に立ってみないと分からないと思います。
また、白木綿花(しらゆふばな)とは、楮の繊維で作った造花のことで、万葉集では白いものの比喩としてよく用いられます。例えば、「山高み 白木綿花に 落ちたぎつ 滝の河内は 見れど飽かぬかも」という歌(巻6-0303、笠金村)がありますが、そこでは、白木綿花を白いしぶきを立てて落ちる滝の例えとして用いています。
この逢坂の歌では、琵琶湖に白い波まで立っていると、白木綿花という例え言葉を使って、感嘆の声を上げています。通常湖は海と異なって波が穏やかなことから、白い波が立つという形容は、琵琶湖が海のように大きいことを間接的に表現しています。
(記: 2009年7月14日)


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万葉集の風景 "View of Manyou" HP開設: 2008/5/1 頁アップ: 2008/7/14 Copyright(C) 2008 Kosharaku All Rights Reserved

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