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春されば 花さきををり 秋づけば 丹の穂にもみつ 味酒(うまさけ)を 神奈備山の 帯にせる 明日香の川の 早き瀬に 生ふる玉藻の うち靡き 心は寄りて 朝露の 消なば消ぬべく しるくも逢える 隠り妻かも |
作者不詳 |
飛鳥川 |
13-3267 |
明日香川 瀬々の玉藻の うち靡き 心は妹に 寄りにけるかも |
作者不詳 |
飛鳥川 |
写真: 飛鳥川の彼岸花
Sep. 23 2008
Manual_Focus, Macro Lens135mm, Format67
RVP100 |
長歌は、「春になれば花が咲き乱れて、秋になれば真っ赤に色づく神奈備山は裾野に明日香川をめぐらせているが、その明日香川は流れの速い瀬に生える玉藻が打ち靡くようにひたすら恋焦がれていたかいがあって、隠し妻のあなたにようやく会えたことだ。」という意味。"生うる玉藻の"までは、"うち靡き"を導く序言葉。
反歌の上三句は、長歌を返している。意味は「お会いしてはっきり貴方の虜になりました」というもの。
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この歌は、"神奈備山の 帯にせる 明日香の川の"となっているところが重要と思います。何故かというと、明日香の神奈備山はどの山に充てるかという所謂"神奈備山論争"というものがあるからです。要するに万葉集に頻繁に出てくる明日香の神奈備山が学説的にはっきりしないのです。雷丘説、甘樫丘説、ミハ山説、南淵山説、岡寺山説など諸説紛々で、全く定まった学説がないようです。ただ、私はこの歌から類推して、山裾に明日香川を廻らせている甘樫丘が明日香の神奈備山に相応しいのではないかと勝手に解釈しているのですが、如何でしょうか。
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(記: 2008年10月5日) |
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