11-2417 |
石上 布留の神杉 神さぶる 恋をも我れは さらにするかも |
柿本人麻呂集 |
布留 |
写真: 石上神宮の神杉
June 7 2008
Manual_Focus, Lens50mm, Format645
RVP100 |
万葉集に抜粋されている柿本人麻呂集の"寄物陳思"から。"寄物陳思"とは、恋を述べるのに事物を用いて表現するという意味で、この歌では、"石上 布留の神杉 神さぶる"が"恋"にかかっている。石上神宮の布留の神杉が年を経て神になったように、私の恋も永久に続いて、あの神杉のように神々しいものになるかもしれない"という意味。
|
柿本人麻呂の歌を読んで一番驚くことは、まだ仮名が無い時代にあって、日本語を漢字で表現する苦闘がその原典にありありと刻まれていることです。特にその初期の作品は、日本語創造のダイジェストを見るようです。この歌の場合、原典では次のように表記されていて、たった12文字でしかありません。
この中で、"神さぶる"が、原典では"神成"と表記されていることは注目に値します。"神さぶる"を"年ふけた"という訳を充てている例がありますが、"神成"の解釈は"年を経て神になる"というのが正しい理解で、"年老いても恋をすることがあろうか"という訳よりは、"私の恋も永久に続いて、あの神杉のように神々しいものになるかもしれない"という訳のほうが相応しいと思います。 |
(記: 2008年6月14日) |
|
|