万葉の故地を写真で巡る 万葉の風景


07-1274 住吉の 出見の浜の 柴な刈りそね 娘子らが 赤裳の 裾の濡れて 行かむ見む 柿本人麻呂歌集 住吉
(出見の浜)




写真: 住吉, 国道6号線沿いの高燈篭
Jan.3 2009
Auto focus, Lens28-70mm
RDPV

柿本人麻呂歌集の歌。施頭歌と呼ばれる577-577の古い万葉集の形式を持つ。「住吉の出見の浜の柴を刈らないでください。乙女達が赤裳の裾を濡らしていくのを見たいから」という意味。

施頭歌は、万葉集に62首あって、そのうち35首が柿本人麻呂歌集に収められています。上句の577と、下句の577が呼応するようになっているのが大きな特徴で、問答形式の古い謡いものの要素を色濃く持っています。歌垣における掛け合い、あるいは集団における歌舞(ロンド)形式による回し歌から派生したものと考えられています
この歌は、「柿本人麻呂の歌集に出づ」との題詞がありますが、万葉集編纂の折、柿本人麻呂個人の歌集がそっくり万葉集の巻7辺りに組み込まれたと考えられ、この歌は柿本人麻呂本人の作歌の可能性もあります。
この歌の前後には、柿本人麻呂歌集の施頭歌が23首収められていますが、調べてみると、次のような類型歌が含まれています。
07-1274 住吉の 出見の浜の 柴な刈りそね 娘子らが 赤裳の 裾の濡れて 行かむ見む
07-1276 池の辺の 小槻の下の 小竹な刈りそね それをだに 君が形見に 見つつ偲はむ
07-1277 天なる 日売菅原の 草な刈りそね 蜷の腸か 黒き髪に あくたし付く
07-1291 この岡に 草刈るわらは しかな刈りそね ありつつも 君が来まさば 御馬草にせむ

1277番歌の下句が若干異なりますが、要するに「・・・刈りそね、・・・(せむ)」というのは、ひとつのパターンだったことがわかります。これは、やはり実際に歌垣のような場所で詠われていた歌謡表現のひとつだったのではないてしょうか。
さて、ご覧の写真は、住吉大社から海に向う潮掛道に残る「高燈篭」。日本最古の燈篭とされ、建立された江戸中期には、現在位置から200mほど西方の浜辺にあったそうです。このあたりは、古代の出見の浜にあたり、遠く淡路島が望めたそうです。
(記: 2009年2月14日)

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万葉集の風景 "View of Manyou" HP開設: 2008/5/1 頁アップ: 2009/2/14 Copyright(C) 2008 Kosharaku All Rights Reserved

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