07-1219 |
若の浦に 白波立ちて 沖つ風 寒き夕は 大和し思ほゆ |
藤原房前 |
和歌浦 |
写真: 和歌浦・片男波海岸の白波
Jul. 17, 2010
Manual_Focus Lens105mm, Format67
RVP100F |
藤原卿作七首のうちの一首。藤原卿は、藤原四卿のひとり藤原房前(ふじわらふささき)と考えられる。いまだ年月などの詳細は不明と題詞にいう。
"沖から風が吹いて白波が立つ和歌の浦の寒々とした夕べの景色を見ていると、大和のことが思い出される。"
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和歌浦は、万葉集に13首が詠まれた風光明媚なところ。かつては、大河紀ノ川が今の和歌山市街地域で南方に大きく迂回して、この和歌浦湾に注いでいました。
和歌浦湾は、片男波公園の砂州に囲まれた内湖のような地形をしていますが、かつては片男波公園の砂州はなく、今に残る和歌川から天神山麓までの和歌浦町一帯がすべて紀ノ川下流に大きく広がる汽水域だったと思われます。特に和歌浦町に点在する鏡山、雲蓋山、妙見山、船頭山は、当時は紀ノ川河口部に浮かぶ島だったと考えられ、これらの島を総称して"玉津島山"と呼んだようです。宮城県の松島のような景色が想像できます。地図では、玉津島神社の後方に連なる小丘陵がその玉津島山にあたります。
07-1222 |
玉津島 見れども飽かず いかにして 包み持ち行かむ 見ぬ人のため |
藤原房前 |
09-1799 |
玉津島 礒の浦廻の 真砂にも にほひて行かな 妹も触れけむ |
柿本人麻呂 |
現在、片男波公園の中ほどに(財)和歌山県文化振興財団による「万葉館」が建設されて、また公園内の"万葉の小路"には万葉歌の石碑が数多く建立されて、和歌浦に係る万葉歌を偲ぶ拠点になっています。(片男波公園/万葉館)
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(記: 2010年8月25日) |
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