万葉の故地を写真で巡る 万葉の風景


06-0969 しましくも 行きて見てしか 神なびの 淵はあせにて 瀬にかなるらむ 大伴旅人 飛鳥川




写真: 飛鳥川の淵、飛鳥寺近く
Mar. 22 2009
Manual focus, Lens50mm, Format67
RVP100

大伴旅人が、大宰府の帥の任を解かれて平城京の自邸に戻ってから、故郷の飛鳥を偲んで詠んだ歌。"少しの間でも行ってみてみたいものだ。飛鳥の神奈備山の裾を流れる飛鳥川の淵は、浅くなって瀬になったろうか。"という意味。

大伴旅人は、大宰府の任地で最愛の妻を亡くした後、平城京の自邸に戻って、亡き妻を偲ぶ歌、故郷の飛鳥を偲ぶ歌を多数作り始めます。どの歌も、哀惜の念切々たるものがあり、旅人の青春を偲ばせるものばかりです。題詞には「三年辛未(天平3年/731年)、大納言大伴旅人卿の、寧楽の家に在りて故郷(飛鳥)を偲ぶ歌2首」とあり、この歌と970番の"指進の萩"を偲ぶ歌が対になっています。どちらも旅人が青春時代をすごした飛鳥の一風景を詠っています。
飛鳥川は、稲淵・栢森を下って島ノ庄で飛鳥盆地の上手にいたり、飛鳥の岡本宮あるいは板葺宮を舐めるように流れて、向原・雷で方向を変えて平野部に出でて、藤原京を斜めに北向して果てには大和川に合流していますが、向原・雷あたりまでは、ほぼ現在と同じ流路が維持されていて、風景もそれほど変わっていないと思われます。雨が降ると激流となり、夏には水流が減って玉藻なす浅瀬になって、川瀬に置かれた飛び石(石橋)を伝って渡れたことが、万葉集のいくつかの歌で分かります。
(記: 2009年4月12日)

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万葉集の風景 "View of Manyou" HP開設: 2008/5/1 頁アップ: 2009/4/12 Copyright(C) 2008 Kosharaku All Rights Reserved

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