万葉の故地を写真で巡る 万葉の風景


02-0165 うつそみの、人にある我れや、明日よりは、二上山(ふたかみやま)を、弟背(いろせ)と我が見む 大伯皇女 二上山




写真: 二上山の夕陽
Oct. 5 2008
Manual_Focus, Lens105mm, Format67
RVP100

無実の罪を被せられて悲劇の死を遂げた大津皇子を偲んで、姉の大伯皇女が詠んだ歌。「この世の人である私は、明日からはこの二上山を弟と思って眺めることにしよう。」という意味。大津皇子の亡骸は二上山に葬られた。

この有名な歌の写真を撮ることは大変難しいと思います。天武天皇が亡くなった後わずか24日にして、謀反の罪で死に追いやられた大津皇子と姉の大伯皇女の悲劇の物語は、教科書にも載っており、誰でもそのあらすじを知っています。特にこの歌は、入江泰吉さんが撮られた二上山の夕景写真が有名で、皇子の怨念がこもったような血色の暮色を誰でも狙いたくなるものです。しかし、実際に大伯皇女の歌を詠んでみて、皇女の目線からこの歌をイメージし直してみると、私はむしろ透明感のある寂寥感漂う夕景を狙ってみたくなりました。何故なら、怨念こもる血色の夕景は大津皇子の心象風景であって、最愛の弟を失って幾許かの時間を経た後に大伯皇女が詠う歌ならば、もっと静かな透明感のあるイメージが相応しいと思うようになりました。
果たして、この写真がイメージ通りかと問われると何ともいえないのですが、残された者の悲しみのようなものは表現できたと思うのですが如何でしょうか。
(記: 2008年11月1日)

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万葉集の風景 "View of Manyou" HP開設: 2008/5/1 頁アップ: 2008/11/1 Copyright(C) 2008 Kosharaku All Rights Reserved

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