万葉の故地を写真で巡る 万葉の風景


01-0054 巨勢山(こせやま)の つらつら椿 つらつらに 見つつ偲はな 巨勢の春野を 坂門人足 巨勢寺跡の椿




写真: 巨勢寺塔跡の心礎と椿の花
Mar. 21 2009
Manual_Focus Lens105mm, Format67
RVP100

題詞によると、大寶元年辛丑(701年)の秋九月に、太上天皇(持統上皇)が紀伊国に行幸した時の歌。「今は秋ではあるが、巨勢山に数多く並んでいる椿をよくよく見て、椿の花が咲き誇るという巨勢の春野を偲ぶことにしよう。」という意味。なお、作者の坂門人足は伝不詳。

御所市古瀬辺りは、飛鳥から吉野・紀州方面に向う所謂"巨勢道"の狭隘な谷沿いにあって、かつては古代豪族の巨勢氏が拠点としていたところです。巨勢氏の氏寺であった巨勢寺は、当時朝廷から封戸を賜るほどの大寺でしたが、今は塔跡の心礎を残すのみ。ただ、この歌が読まれたときにこの場所に存在していたことは間違いなく、巨勢道を南下する持統上皇は、曽我川を挟んでこの寺を望んだはずです。
歌そのものは、序詞を駆使した技巧的なもので、歌意にそれほどの深みがあるわけではありませんが、何といっても"巨勢山の つらつら椿 つらつらに"という上句の音律は素晴らしいものがあります。"つらつら椿"とは、数多く並んでいる椿のことで、古瀬はこの頃椿の名所であったのでしょう。
なお、この写真は、たまたま境内に藪椿の落花がたくさんあったので、思い切って塔跡の心礎の上に並べて撮ってみました。花弁の赤と花芯の黄の対比が鮮やかで、思いのほかインパクトの強い印象的な写真になりました。
(記: 2009年4月1日)

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万葉集の風景 "View of Manyou" HP開設: 2008/5/1 頁アップ: 2009/4/1 Copyright(C) 2008 Kosharaku All Rights Reserved

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